再開発5/発意-1(杉並区阿佐ヶ谷)
ざっと市街地再開発の進み方
- 1. 「誰か」が再開発をしたいと思う
- 2. 近隣住民、地権者たちが勉強会、協議会結成
- 3. 準備組合結成
- 4. 都市計画決定
- 5. 組合結成
- 6. 権利変換
- 7. 住民が立退き、引越し
- 8. 更地へ
- 9. 工事着工
- 10. 竣工
- 11.地権者が新マンションへ戻る
- 12. 増床部分を分譲販売、商業利用者への契約
1. 「誰か」が再開発をしたいと思う
主役はその地に住む「地権者、住民」。
以上。
しかしながら現実はどうもそうはなっていない事例があるみたいだ。
と前回書いた。
健全に考えれば、
・建物などの老朽化
・耐震、災害対策
・単独で立替えるより再開発制度を利用した方が地権者負担が少なくて済む、
などと
・「地権者、住民」が思い、
・これからはどのような街がふさわしいのかと「まちづくり」の構想を練っていく。というのがスタートであるはず。
しかしながら、昨今の事例では「地権者、住民」がそう思うよりも先に<行政、再開発コーディネーター、デベロッパー>がアタリをつけ、「地権者、住民」を説得して進めるというものが多い様に感じる。
そうした場合、結構揉めている。
「地権者、住民」と<行政、デベロッパー>は協力し合いながら「まちづくり」を進めていくのだから順番なんか逆でもいいのか?
いやいや、揉めている地区の「心配する会」「反対運動」の人たちの言い分を聞くと「地権者や住民の生活、資産、その土地の歴史、文化を無視、蔑ろにした再開発計画だ!」という不満が共通してみて取れる。
行政が「耐震、災害対策」の観点から再開発を提案する場合は、一応の理屈はある。しかし再開発の「まちづくり」の中身が主役たる「地権者、住民」が抱くものと相違があれば揉める。
最悪なのは、特に緊急性がないと思われる街に「利益追及」だけの企業論理で
<再開発コーディネーター、デベロッパー>が乗り込んできた場合だ。
・「主役」は誰か?
・目的は何か?
の2点が問題の焦点だろう。
阿佐ヶ谷再開発計画 説明会で怒り爆発 杉並区は勝手に進めるな!
「どこが理想のまちづくりだ! 小学校がどうして病院の跡に行かなきゃならないのか! 西友ができただけで、魚屋も八百屋も靴屋も店をたたんだ。パールセンターも反対している。住んでる人間のことも考えず、勝手に決めるな!」
〜週刊『前進』04頁(3040号03面04)(2019/06/03)から引用
「区はこれまでも、説明会で意見を聞いたと言って、結局反対の声を押しつぶしてきた。欅(けやき)の森は区民の財産だ。病院跡地の汚染・除去費用も区が負うことになりかねない。子どもの健康問題、児童館廃止など、阿佐ケ谷だけの問題ではない。全区民の住民投票をするべきだ」
「河北病院、杉並第一小学校の移転はいつどういう動機で決まったのか?」
「説明会を重ねたと言うが少人数の参加でどんどん進めるやり方はおかしい」
洞口議員も終始挙手して闘いましたが、司会は意図的に洞口さんを当てず。しかし、次々と続く区民、住民からの追及発言が大きな拍手とともに区を追いつめました。
とても重要なキーワードが発言されている。人間怒っている時には本音が出る。
・住んでる人間のことも考えず、勝手に決めるな!
・区はこれまでも、説明会で意見を聞いたと言って、結局反対の声を押しつぶしてきた
・欅(けやき)の森は区民の財産だ
・少人数の参加でどんどん進めるやり方はおかしい
↓
杉並区という<行政>が主導で進めようとしていることが読み取れる。
中身についても疑問が多数指摘されているから、「地権者、住民」がまったく納得、賛成していないプランを進めようとしているのか?
杉並区は「北東地区まちづくり計画は今年3月に策定された」と強弁し、「本年中に都市計画審議会を経てスケジュールを決定する」としています。
〜週刊『前進』04頁(3040号03面04)(2019/06/03)から引用
一瞬、いつの時代の話だと目を疑った。
昔はよく聞こえてきた土地の再利用に関する住民反対運動やバブルの時代の強引な地上げの話もこの頃は「聞こえてこない=なくなった」と思っていた。
こんなご時勢だから不透明な仕事の進め方は必ずや話題になるだろうし、「再開発ラッシュ」というくらい多く予定されているんだから、「地権者、住民」と<行政、デベロッパー>は今の時代に即した賢いやり方で、上手に協議、調整、理解し合って進められているんだろうと思っていた。
しかししかし、調べてみると幾つかの地区で揉めている。
日本国中の細かく切り取られた再開発予定地区の物語がYahooニュースのトップになったりワイドショーのカメラが入ったという記憶がないだけで、読めば大変なことが各地で怒っているじゃないか。
今の今まで暮らし、生活し、通学し、通院し、仲間やご近所づきあいのベースである「地権者、住民」の土地建物が「一方的に」奪われることがあるのなら、
その代替案が納得出来るものでないのなら、一人一人の人生に関わる大問題である。
そもそもの計画の中身を見ると、杉並区は平成28年6月に
「阿佐ヶ谷駅等周辺まちづくり方針 中間まとめ」を公表している。
冒頭に掲げられた<背景と目的>は、
○商店街・飲食街のにぎわいや優れた交通利便性と、周辺の閑静な住環境とが共存した成熟したまちです
○古くから区役所等の公共公益施設が集積するなど、官庁街(シビックゾーン)ともいうべき区の中心的な拠点のひとつとなっています
○一方、後背地には基盤未整備な木造住宅密集地域を抱え、首都直下地震等に備えて防災性の強化や基盤整備が喫緊の課題となっています
と3つ記載されているが2つは背景で、目的は最後の1項目だけ。
「防災性の強化」は専門家が必然性があると判断したことだろうから、立派な目的だ。
要は、再開発すること自体に理解、賛成したとしても、再開発後の「街並み」がどういうものになるのか?その中身そのものが「地権者、住民」の理解、賛成を得られれば問題ないのだろう。
杉並区作成の「阿佐ヶ谷駅等周辺まちづくり方針」の中身を「地権者、住民」がどう受け取るか、どこが問題なのか、判断するのは当該地区の「地権者、住民」の権利だ。
他地区の人間としては具体的な項目に意見する立場にないけれど、平成28年に公表し、これまでも説明会を重ねてきた(少数相手だけ?)3年後の今も怒号が飛ぶような説明会ではとてもじゃないが「地権者、住民」が歓迎している中身を提供できていないことの証だと思われる。
それを「地権者、住民」の理解、賛同を得ないまま強引に進めるとしたら、杉並区だけの問題とは言えなくなるだろう。
東京都は、国はそんな行政の進め方を是認するのか?
(記*手尾広遠)