再開発6/発意-2(杉並区高円寺)
ざっと市街地再開発の進み方
- 1. 「誰が」が再開発をしたいと思う
- 2. 近隣住民、地権者たちが勉強会、協議会結成
- 3. 準備組合結成
- 4. 都市計画決定
- 5. 組合結成
- 6. 権利変換
- 7. 住民が立退き、引越し
- 8. 更地へ
- 9. 工事着工
- 10. 竣工
- 11.地権者が新マンションへ戻る
- 12. 増床部分を分譲販売、商業利用者への契約
1. 「誰が」が再開発をしたいと思う
主役はその地に住む「地権者、住民」。
以上。
しかしながら現実はどうもそうはなっていない事例があるみたいだ。
と書いた。
前回は杉並区阿佐ヶ谷駅前再開発の状況を見た。
引き続き、お隣の同じ杉並区の高円寺の状況。
2018/9/23 高円寺で高円寺再開発反対パレードが行われた。
- 柄谷行人
- カフェ「ベルク」の店長
- 「SAVE THE 下北沢」の代表
- 京都大学の吉田寮に住む学生
- 韓国、台湾、香港の若者
- 斎藤区議会議員
- どついたるねん
- パンクロッカー労働組合
- BOOViES
- ねたのよい
カフェ「ベルク」は、お客さんたちの署名活動などもあって生き残った店。
「SAVE THE 下北沢」は下北沢の再開発反対運動を担ってきたの代表。
京都大学の吉田寮は、現在取り壊しの危機にあるという。
区議会議員の斉藤さんは地元で斉藤電気を営んでいる。
(以上、第460回:「マヌケを守れ!」〜高円寺再開発反対パレード。の巻(雨宮処凛)から抜粋引用) いま、高円寺には外国人観光客が半端なくいる。雑多な文化、人種がある街として世界的に人気らしい。韓国、台湾、香港の若者とはなんらかのきっかけで高円寺にやって来て、高円寺ファンになって高円寺が壊されてしまうことを憂いスピーチしたんだろう。
ここ数ヶ月ネットでチェックしている限りでは最も「熱い」反対運動が展開されているのがここ、高円寺に見える。
なぜ、ここまで反対運動が盛り上がっているのか。
杉並区が公表している「杉並区まちづくり基本方針」は平成25年10月、
「すぎなみの道づくり」は平成29年3月のもので、
2018年3月に東京都が公表した「地震に関する地域危険度測定調査(第8回)」を見ると、「補助227号線」の建設計画がある高円寺北3丁目が都内の総合危険度ランキング64位にランクインしており、杉並区内ではワースト2位だ(調査は東京都内5177町丁目が対象)。特に火災危険度が高い。
『東洋経済オンライン「高円寺」で再開発がなかなか進まない背景』より
再開発の必要性で行政が指摘するのは当然「防災対策」だろう。
葵の御紋みたいなもんだ。ははぁー。
古くなれば、どこもかしこもそうなるだろう。
だが、なんと、
東京都が戦後以降に作成した都市計画道路の一つで、高円寺南口の大通り(高南通り)をそのまま北へのばし、あろうことか純情商店街と庚申通り商店街を壊して大通りを早稲田通りまで繋げるというもの。実は80年代ごろには都が実際に計画を実行しようとしたが、当然のように高円寺住民の大反対運動が発生し、計画は見事頓挫!
「【入門編】高円寺再開発計画とは何か?」より
都は自ら実行に移すのではなく、杉並区にその業務を委託し、その道路計画を実行する管轄は杉並区に移っていた。
人気取りが気になる都知事が区へ移管したのか、政治のカラクリまでは知る由もないけれど、東京都が構想した計画を区が受け継いだ、ということだ。
こんな記述もあった。
2017年4月に杉並区から発表された2025年度までの道路整備の方針「すぎなみの道づくり」ではこの「補助227号線」は2025年度までの着工は目指さず、住民の間で雰囲気醸成が行われてから計画・建設するとしている。
『東洋経済オンライン「高円寺」で再開発がなかなか進まない背景』より
なんだ、それなら問題ないじゃない。
と思うのだけれど、公式な発言がなされたとしても実際に高円寺の人たちは怒っているわけですよね。
2017年4月に言った通り「住民の間で雰囲気熟成が行われてから」と対話、協議が順調ならば、2018年9月に反対パレードは実行されないでしょ。
そもそも「住民の間で雰囲気熟成が行われてから」って、「時間はかかってもやることは決定だから」とも読めるわけですよね。
高円寺の魅力、再開発に反対する理由などを書いている文章がいくつかある。
「高円寺再開発とは何か」では反対理由を7つ挙げている
- 重要な商店街がなくなる
- 高いビルが建ち並ぶ
- 家賃が上がる
- 街が分断される
- 及ぶ影響は街全体に
- 街がつまらなくなる
- 面白い人材の流出
「第114回:恐怖! 高円寺再開発計画が判明!!!(松本哉)」では、
「街中が商店街で個人商店だらけなので、人と人の距離感がやたら近いので、そんなオッサンやおばちゃん達もそんな謎の若い奴らと渡り合いながら妙に生き生きしている」
「海外から来る人たちから異常に人気なのも高円寺の特色のひとつ。」
「変わらない街「高円寺」に時代がやっと追いついた」では、撤退したチェーン店は数知れず、いまやチェーン店のお店がほとんどない、と指摘。すげぇ。
「北は早稲田通り、南は青梅街道、東は環七に囲まれているため、高円寺の街のなかに車が入ってこない」から「車の通りがとても少なく、歩いていてストレスが少ない」とも。そうだったのか。そうすると今回の道路計画はまさに現在の「ストレスが少ない」状態が悪化することに繋がりそうだ。
筆者は生まれはこの杉並区。実家もある。しかし阿佐ヶ谷、高円寺とは沿線が違う。いま自分の家は仕事の関係でほかの区民だ。
それでも20年くらい杉並住民だった身としては阿佐ヶ谷、高円寺、西荻窪に特別の愛着は持っているし、行政区分としては武蔵野市になる吉祥寺までの横一線のどこかで多くの時間を費やした。
今でも名残が継承されて若い人や海外の人にまでその魅力が理解され愛されるってもの凄いことだと実感できる。
悔しかったらほかの街もやってみろ、っていうくらい簡単に出来ることではない。
街の特性は「時間と人」が積み上げてきた結果でしかないものなのだし、いきなりお上から「こうしなさい」って言われても、そりゃあ納得出来ないよね。
いくらお役人さんでも高円寺の特色、文化は理解しているわけでしょ。肌身で感じているわけでしょ。
それは発表している方針案の中にも明記されている。
国もインバウンドを数字でしか見ていないようだけれど、その要素である歴史、文化、サブカルチャー、人、街の雰囲気、生活、吸引力といったものが一朝一夕で作られると勘違いしているのか。
いや理解はしているんだろう。しかしお上は向かう視線の先が違うんだろう。
そうとしか思えないよね。
必要なら「防災対策」だけ、ちゃちゃっとやって現在ある街並みは残したままにしたらいいんじゃないの?
「防災」と「文化、歴史」が取引されるのはどう考えても釣り合わないでしょうが。
そうすれば反対運動は起こらず、評価されるよ。住民から。
でも、どうせ「仰ることはごもっともなのですが、防災対策を本格的にやるとなれば、それ相当の時間と工事が必要となりまして・・・」と専門的な説明で攻めてくるんだろうな。
いくら時間がかかって防災対策を行うにしても、厳然と人気、文化が明白に存在する商店街を取り壊すっていう結論に住民たちは納得していないんでしょうが。
お仕事とはいえ、役人、デベロッパーの人たちには「心」が無いのですかね?
無味無臭、利便性だけの街を日本中におっ建てて、良心が痛まないんすかね?
高円寺の再開発に反対する人たちの説得力がある文章を読んでいると当事者じゃないのに、この国に今いることが悲しくなってきた。
(記*手尾広遠)